ネコノイル(仁尾智)
いい人と思われそうでも まあ いいや いまから猫のはなしをします * 捨て猫が鳴いていました 鳴くこともできなくなった猫の隣で 見て見ないふりをしてたら死んでいた猫以外なら見なかったかな また猫と消臭グッズは増えたけど鼻はとっくにバカになってる 窓際に5匹の猫が並んでる 「るるるるる」って見えなくもない 去勢したうえ軟禁している猫に癒されたりして申し訳ない 「この家はどうだ?」と猫に聞いてみる 何も言わないのをいいことに なでられている猫よりもなでている僕が鳴らしてあげたい喉だ どの猫のものか推測しながらのトイレ掃除も大事な仕事 預言者が未来を憂える顔をして用を足してる猫が好きです * 盛り上がりそうなときにもベッドには猫が寝ていてなごんでしぼむ ふて寝する僕の額に空腹の猫の湿った鼻が冷たい 胸に猫 足もとに猫 右に妻 枕元に猫 寝苦しい夜 なにもかも見破られてる気がしてて猫の前だけ気が楽になる 1階に降りていけない猫といてきょうはバイトをサボる気がする 食卓の上まではもう跳べなくて見上げる猫と食う一夜干し * 植えたてのネギでじゃれてる そういえば猫という字はけものへんに苗 少しずつ慣れてきている あの塀にいつもの猫がいない風景 猫じゃないことを確認されながらまた轢かれていく車道の軍手 無愛想な義父が乗る軽自動車のボンネットには猫の足あと * 抱き上げた実家の猫が記憶よりずっと軽くなっててかなしい もう猫はいないんだった いるときのくせでゆっくり戸を閉めながら もう猫がいない実家のキッチンの猫のうつわに残るカリカリ 猫が爪とぎをしていたソファーには3年増えてないキズだらけ * 名を呼ぶとしっぽで答える猫がいる 妻の名前でも答えちゃうけど 猫のえさしかないけれど空腹だ 猫のえさならある 空腹だ この家は長い道草なのですか? 元野良猫が外をみている 縁側に猫が寝ている家にいてもう戻れないくらいに平和 血塗られた歴史はないがだんだんと猫塗られていく未来ならある * 僕たちの間に猫がいなかったことがないのが将来の不安 ※ 連作「やらないでおく」とダブっている短歌も含まれていますが、「やらないでおく」はダブっている短歌を外して、再考中です。 ※4/8追記 下記を修正しました。 預言者が未来を憂う顔をして用を足してる猫が好きです ↓ 預言者が未来を憂える顔をして用を足してる猫が好きです
by satoshi_ise
| 2006-03-07 23:57
| 短歌
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