「ほっ」と。キャンペーン
連作 ネコノイル(仁尾智)
ネコノイル(仁尾智)


いい人と思われそうでも まあ いいや いまからねこのはなしをします



捨て猫が鳴いていました 鳴くこともできなくなった猫の隣で

見て見ないふりをしてたら死んでいた猫以外なら見なかったかな

また猫と消臭グッズは増えたけど鼻はとっくにバカになってる

窓際に5匹の猫が並んでる 「るるるるる」って見えなくもない

去勢したうえ軟禁している猫に癒されたりして申し訳ない

「この家はどうだ?」と猫に聞いてみる 何も言わないのをいいことに

なでられている猫よりもなでている僕が鳴らしてあげたい喉だ

どの猫のものか推測しながらのトイレ掃除も大事な仕事

預言者が未来を憂える顔をして用を足してる猫が好きです



盛り上がりそうなときにもベッドには猫が寝ていてなごんでしぼむ

ふて寝する僕の額に空腹の猫の湿った鼻が冷たい

胸に猫 足もとに猫 右に妻 枕元に猫 寝苦しい夜

なにもかも見破られてる気がしてて猫の前だけ気が楽になる

1階に降りていけない猫といてきょうはバイトをサボる気がする

食卓の上まではもう跳べなくて見上げる猫と食う一夜干し



植えたてのネギでじゃれてる そういえば猫という字はけものへんに苗

少しずつ慣れてきている あの塀にいつもの猫がいない風景

猫じゃないことを確認されながらまた轢かれていく車道の軍手

無愛想な義父が乗る軽自動車のボンネットには猫の足あと



抱き上げた実家の猫が記憶よりずっと軽くなっててかなしい

もう猫はいないんだった いるときのくせでゆっくり戸を閉めながら

もう猫がいない実家のキッチンの猫のうつわに残るカリカリ

猫が爪とぎをしていたソファーには3年増えてないキズだらけ



名を呼ぶとしっぽで答える猫がいる 妻の名前でも答えちゃうけど

猫のえさしかないけれど空腹だ 猫のえさならある 空腹だ

この家は長い道草なのですか? 元野良猫が外をみている

縁側に猫が寝ている家にいてもう戻れないくらいに平和

血塗られた歴史はないがだんだんと猫塗られていく未来ならある



僕たちの間に猫がいなかったことがないのが将来の不安



連作「やらないでおく」とダブっている短歌も含まれていますが、「やらないでおく」はダブっている短歌を外して、再考中です。

※4/8追記
下記を修正しました。
預言者が未来を憂う顔をして用を足してる猫が好きです

預言者が未来を憂える顔をして用を足してる猫が好きです
[PR]
by satoshi_ise | 2006-03-07 23:57 | 短歌 | Comments(8)
Commented by 振戸りく at 2006-03-10 13:19 x
かんたん短歌をのぞき始めた頃から、仁尾さんは猫好きと決めつけていました。たぶん筆名の響きからなんだろうけど。
ネコノイルって機械の名前みたいだと思ったけど、猫の居る、なのかなー。
大好きだーって叫ぶ愛情表現とは違って、そばにいてくれないと不安なんだよってどことなく母性本能をくすぐる感じがします。猫らしくて好きです。
Commented by satoshi_ise at 2006-03-10 16:17
振戸さん
コメント、ありがとうございます。
>筆名
猫の鳴き声が由来、ではないです。
大阪府八尾市に住んでいたときに「八尾の仁(ひとし=本名)」で「仁尾」と限りなく安直につけました。

>猫らしくて好きです。
ありがとうございます。
全部が全部猫で、「もしかしらひとりよがりかなぁ……。どうだろうなぁ……」と思いつつ、発表してみました。だから感想をいただけて、嬉しいです。
Commented by 福々屋大福 at 2006-03-14 01:27 x
猫と聞いてコメントさせていただきます。
私はどんな女性より猫のほうが可愛いと思っていますが、それにしても妻より優先しすぎでは。(笑
でも猫を詠んでいくと妻が出てくる、その構図が好きです。

家猫は居なくなっちゃったんでしょうか?それとも老猫なのでしょうか?
それでは、お騒がせいたしました。
Commented by satoshi_ise at 2006-03-14 01:37
福々屋大福さん
コメント、ありがたいです。
>それにしても妻より優先しすぎでは。
大丈夫!
なぜなら妻は、僕が妻より猫を優先する4倍くらい僕より猫を優先する人だから。
>でも猫を詠んでいくと妻が出てくる、その構図が好きです。
家には猫と妻しかいない上に、その家からあまり出ないので……。
>家猫は居なくなっちゃったんでしょうか?それとも老猫なのでしょうか?
「抱き上げた実家の猫が~」から「猫が爪とぎを~」までは、実家の猫の話です。
我が家にはいま5匹の猫がいて、「るるるるる」って見えなくもないです。
Commented by satoshi_ise at 2006-03-16 17:43
「憂う」って、「憂える」が正しいのだろうか。
Commented by satoshi_ise at 2006-04-09 00:54
「憂える」に修正して、再投稿しました。
Commented by 枡野浩一 at 2006-04-09 14:49 x
拝読しました。

「猫」というのに縛られすぎている、
というのを気にしないように心がけて読めば、
それぞれ工夫があり、
そうですね、
俵万智さんが子育てのことを歌った一連のように、
猫好きの私たちの共感を呼ぶ歌たちが
揃っていると思います。

つぶはそこそこ揃っているが、
それが平板に見えてしまうきらいも。

この連作と猫の写真を組み合わせ、
猫雑誌に載せたら反響は大きいかもしれない。

私が今回初めて目を通した(というか意識した)歌で、
ちょっと心がとまったのは、
「るるるるる」の歌くらいかな。
あとは以前もコメントした歌。

胸に猫 足もとに猫 右に妻 枕元に猫 寝苦しい夜

は「寝苦しい夜」と着地してるのが説明的でマイナス。



連作をつくる中で苦しむことが、
今のあなたに必要な努力かもしれない。
ほかのテーマでもやってみてください、連作。

Commented by satoshi_ise at 2006-04-10 15:55
枡野さん
お忙しい中、連作への丁寧なコメント、ありがとうございました。
コメントに対するお返事は、のちほど記事として書いて、トラックバックさせていただきます。
<< おわび短歌(その5) お題以外の短歌 >>