週刊ネコタンカルタ:「え」
縁側に猫が寝ている家にいてもう戻れないくらいに平和(仁尾智)
(初出「かんたん短歌blog」投稿/連作「ネコノイル」より)
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 妻は、子供の頃から今まで、そばに猫がいなかったことが一度もない。いわば生粋の猫好きである。
 僕も猫と暮らしていたことはあるけれど、猫がいなかった時間のほうがずっと長い。
 だから、現在12匹もの猫を飼っているのは、妻のせいなのだ。僕自身、猫を「特に」好きだとは、思わない。犬もウサギもハムスターも、同じように好きだし、たまたま猫と縁があっただけだ、と思っている。

 最近、自宅から最寄り駅までの道すがら、縁側で猫が気持ちよさそうに寝ている家を見つけた。それ以来、駅に行くたびに、その家の縁側が気になる。猫がいるとうれしいし、いないとハズレくじを引いたような気持ちになる。ときどき2匹寝ていることがあって、その光景を目撃できたら、もうその日は、いい1日になること決定。
 なんなのだろう、この気持ちは。

 出張で大阪に訪れたとき、ホテルから仕事場に行くまでにある公園で、黒猫を見かけた。ブランコにちんまりと座っていた。それ以来、出張のたびに、無理やりその公園を経由して通勤するようになった。大阪での行きつけは、バーではなくて公園で、馴染みの顔は、マスターでも常連客でもなく、黒くて痩せた猫だ。見つけると安心するし、見かけないと、心配になる。
 なんなのだろう、この気持ちは。

 「なんなのだろう、この気持ちは」と考えていて、本当に不意に「ああ」と思い当たった。

 どうやら僕は、猫のことを「特に」好きになりつつあるらしい。
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by satoshi_ise | 2010-05-09 02:42 | ネコタンカルタ
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