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つぶやき電書
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『@nyatsuko―ヨエコの最後のライブで一緒に抱き合って泣いた着物美女は誰だったんだろうか。―』
つぶやき:ニャツコ
挿絵:三和緒むら
編集:佐々木あらら
定価:100円(ePub版・PDF版込み)

この電子書籍は、ニャツコさんという「普通の女の子のごく日常的なつぶやき」に、イラストレーターの三和緒むらさんが挿絵をつけ、歌人の佐々木あららくんが編集した「つぶやき電書」である。

発売前の電書だけれど、先着20名に「おためし読者」として無料で提供いただける、とあったので応募してみた。

なんだろう、これは。
一読して、不思議な気持ちになった。
僕が知っているどの読み物とも違う。



詩であり、小説であり、ドキュメンタリーだった。

つぶやきの主であるニャツコさんは、自分のつぶやきが本になるなんて、夢にも思っていない。
それどころか、ひとつひとつのつぶやきすらも、誰か(読み手)に向かってつぶやいている、という感じがほとんどしない。
ためしに、この本に掲載されているつぶやき全部の先頭に「そういえば……」と、付け足して読んでみると、大体違和感なく読めてしまう。
つまり、ニャツコさんは「そういえば……」と、本当に「ふと気づいたこと」をつぶやいているのだ。誰に同意を求めるでもなく。
さっき「普通の女の子のごく日常的なつぶやき」と書いたけれど、実はそうでもない。
ニャツコさんのように、「本当にふと気づいたことを、(一見)読み手に向かわずにつぶやいている人」は、あまりいない。
普通はふと気づいたことをつぶやくのにも、読み手に向けてしまうものだし、逆に、まったく読み手に向けていないつぶやきは、往々にしてつまらない。
ニャツコさんのつぶやきは、そのさじ加減が絶妙で、それは全然普通じゃない才能だと思う。活かされる場所がどこなのかは、わかんないけど。
その才能に目をつけた佐々木あららくんが、これもまた絶妙なさじ加減で、つぶやきを取捨選択し、再構成して作品にしている。三和緒むらさんが挿絵もかわいいし、つぶやきとの距離感が絶妙。

読み進めると、時間軸とともにゆるやかにストーリーが流れていったり、ちょっとだけあけすけで、どぎまぎさせられたり、ああ、よかったね、とホッとしたり。いつの間にか一人の女性の生活を定点観測しているような罪悪感というか、緊張感も生まれている。
それはそうだ。掲載されているつぶやきのひとつひとつは、作り物ではない「本当のこと」なのだから。

あれ、俺、何を読んでるんだっけ?

こうやって虚構と本当との間の、変な場所に引きずりこまれていく。おもしろい。

この本を読むと、「詩とは?」とか「編集とは?」とか「リアリティーとは?」とか、小難しいことを考えそうになる。そういう意味では、かなりの「問題作」だと思う。

この問題作が買えるのは、11/14(日)に新宿ネイキッドロフトで開催される「電書フリマZ」でだけ。

電書フリマZについて、詳しくはこちらを参照ください。


最後に。
もしかすると俺のつぶやきだって「電書」という額縁を付ければ、魔法のように「詩」が立ち上がるのではないか、と思った。淡い期待を胸に、自分のつぶやきを電書にするイメージで眺めてみた。
……うん、すごくうざい。
by satoshi_ise | 2010-11-07 17:00 | 告知
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