猫短歌30首連作「ネコノイル」(改訂版)
猫の日なので、猫の短歌の連作を掲載します。

下記は、以前発表した連作「ネコノイル」を一部改訂して、
猫写真投稿雑誌『ネコまる』の2011年冬号で発表したものです。



「ネコノイル」(仁尾智)

いい人と思われそうでも まあ いいや いまからねこのはなしをします



捨て猫が鳴いていました 鳴くこともできなくなった猫の隣で

見て見ないふりをしてたら死んでいた猫じゃなければ見なかったかな

猫が増え消臭グッズも増え続け普通の匂いがもうわからない

里親を探すつもりの猫の名は「1」 愛着がわかないように

去勢して軟禁している猫たちに癒されたりして申し訳ない

窓際に五匹の猫が並んでる 「るるるるる」って見えなくもない

縁側に猫が寝ている家にいてもう戻れないくらいに平和



一階におりていけない猫といて きょうは仕事をサボる気がする

空腹だ 猫のえさしかないけれど 猫のえさならある 空腹だ

掃除機が苦手な猫のせいにして昼寝にしたい掃除当番

なにもかも見透かした目で僕を見る猫の前ではうまく笑える

名を呼ぶと尻尾で答える猫がいる 妻を呼んでも答えちゃうけど

盛り上がりそうなときにもベッドには猫が寝ていてなごんでしぼむ

右に妻 左には壁 胸に猫 枕元に猫 股ぐらに猫



植えたてのネギでじゃれてる そういえば猫という字はけものへんに苗

あの塀にいつもの猫が来なくなり きょうもいつもの塀だけがある

ノラなのに人なつっこい おそらくは過去に名前で呼ばれてた猫

もう猫がいない実家のキッチンの猫のうつわに残るカリカリ

無愛想な義父が乗る軽自動車のボンネットには猫の足あと

「あげないよ」って顔で振り向く野良猫の口に丸ごとちくわ一本

猫じゃないことを確認されながらまた轢かれていく車道の軍手



食卓の上まではもう跳べなくて見上げる猫と食う一夜干し

美しい猫の背中をなでている僕の猫背は美しくない

なでられている猫よりもなでている僕こそ喉が鳴っちゃいそうだ

乳を押すしぐさで眠る 母親の乳をふくんだことのない猫

猫が寝て一番さまになる場所が妻のひざだと認めていない

目もあいてなかった猫が哀愁を背中で語るまでの年月

「この家はどうだ?」と猫に聞いてみる 何も言わないのをいいことに



帰るたび「どなたですか?」と嗅ぎにくる猫と十年暮らしています

(『ネコまる』2011年冬号)

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by satoshi_ise | 2013-02-22 18:30 | 短歌
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