猫短歌

<短歌>
ヒゲのない猫などいないはずなのに「ヒゲ」と呼ばれる顔をした猫(仁尾智)
a0014734_171448100.jpg




 猫に名前をつけるのが下手みたいだ。
 たとえば、我が家には「しぐれ」と名付けた猫がいる。毛色が白とグレーだったから「しぐれ」。「かわいいじゃん」と妻の評価も上々だった。愛嬌もあるし、呼びやすそうだし、いい名前だ、と自分でも思っていた。ところが今、僕たち(僕と妻)は「しぐれ」を「ニー」と呼ぶ。「しぐれ」を「ニー」。リフレインしたくなるほど原型がない。
 さらに我が家には「なつめ」と名付けた猫もいる。本屋の前で鳴いていたこと、我輩と言い出しそうな顔をしていたことが名前の由来だ。これも当初は気の利いたいい名前だ、と思っていた。でも僕たちは「なつめ」を「ボウ」と呼ぶ。「なつめ」を「ボウ」。リフレインしたく……(以下略)。
 まだ「ヒゲ」と呼ぶほうがそれらしい。
 人間は怠惰だ。たった3文字の本名を発することすら億劫になり、縁もゆかりもない2文字の名で呼んでしまう。罪深い。
 そして猫は人間に輪をかけて怠惰だ。人間になんと呼ばれようとも返事などまるでしてくれない。(もしくは逆に妻の名前を呼んでも返事をしてしまう)
 どう呼ぼうが、無視されようが、カーテンにおしっこされようが、背中に跳び乗られようが愛すべきことに変わりはないから、まあ、いいと言えばいいのだけれど。
[PR]
by satoshi_ise | 2006-10-04 17:11 | 短歌
<< 火事と首輪 わらび&きり >>